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失恋と読書と


●淡い失恋と混沌

 日記の行間から、当時淡い恋心をいだいたいた相手との帰省時の破局(というようなところまでつきあってないが)が読みとれる。きわめてストイックなものであった。

9月7日(木) 2ヶ月ほど金沢に居なかったし、日記も書かなかった。この間いろんなことがあった。

9月9日(土) 五藤宅に市川氏と行きマージャン。翌朝10時までやる。夕飯は、150円で豚肉のすき焼き。

9月11日(月) 夏休みがすみ、今日から授業。特に新鮮味はない。同じ学部のH君が夏休み中に海水浴中死亡とか。  家庭教師、1件断られるかも。収入が9500円になり少し苦しい。タバコをやめ、朝をパンと牛乳にする。今月は次にような支出予定。
 食費 朝 パンと牛乳 26円。昼食 55円。夕食 64円(医学部食堂で飯大盛り) 145円×30日=4350円。
 部屋代 1700円
 貯金(借金の返しと帰省時の汽車代) 1000円
 本代 1000円
 雑費 1450円
 計  9500円
右の図は、下宿の間取り。

9月12日(火) 金に余裕のないのは気持ちもめいる。ある程度余裕があって精神的な余裕も生まれる。授業料減免の相談に行ったら、特別奨学金の支給者は対象外とのこと。

9月15日(金) 台風18号が近づいたとかで、下宿のおやじさんが窓をを十字に釘付けにしてしまった。市川氏は英語の試験が済んだとかで今晩はいない。一人だ。風が吹く。

9月16日(土) 台風18号の北陸通過に伴い風が激しく下宿が大きく揺れる。市川氏にいたっては、レインコートを着て長靴を履き倒れればすぐに飛び出す構え。家主の好人物のおやじは、全部に窓を打ち付けた後に、仏壇で木魚を叩きお経をあげている。家は倒れなかったが同じ町内で5件隣では大木が倒れて屋根がつぶれる。夜中に見に行く。五軒人町あたりでは犀川の水が溢れ浸水した模様。室戸では最大瞬間風速が、84.6mと言われ気象台始まって以来の超A級台風といわれ最悪のコースを吹きぬける。

9月18日(月) 台風のために木が倒れた兼六園も秋らしくなる。今までは、ポロシャツを、セーターとジャンパーに。寒いのは嫌.

9月17日(日) ここ3日間の発熱もようやく引きそう。異郷での病気は心細い。これからドイツ語。

9月22日(金) 英語の試験。ノート、辞書携帯許可。簡単にできる。あれで不認定が出るというのが不思議。
 K先生からたより。「おおむね良好でした。というよりもとても感じが良かったといい直しましょう。宗教心云々についてはぜんぜん反発を感じませんでした。当然のことですし、むしろ遅かりきです。こないだ紹介したキルケゴールの『愛はすべての罪を救う』、ヘルマンヘッセの『ペーターカーチンメント』、リルケの『鎮魂歌』などが、各々の対神の問題で読ませます。多分君にはケルケのものがいいかも知れぬ。アテネ書房にあるけど潰れたので古本屋でアテネ文庫、30円で出ているものを探しなさい。カッカとした頭を冷やすのに古本屋まわりは最適でしょう。そして思わぬ収穫を得るものものです。ノミシロは本代にまわす事。西田幾多郎のものもいいでしょう。身体を大切にすること。勉強を大切にすること。よく眠ること。」

9月24日(土) 祭りとかで、朝食を下の部屋でよばれる。

 読書は、この時期かなりした。当時はTVも特に普及なかったし、太宰を読んだり、ドストエフスキーの著作をあたったり、資本論を本棚に並べたりと、その時代の学生の読書スタイルがあった。今回は、日記帳の端々に描かれている落書きをカットとして掲載した。
それにしても、最近の学生の活字離れは凄まじい。


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