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安曇野歩けばアルプス屏風と子ヤギの歌碑に当たる


サンケイスポーツ1992年6月23日


絵になるアルプス連峰

 信州は北アルプスのふもと、安曇野を旅した。豊科町が、憩いのレジャーゾーンとして力を入れている緑の広場、ガラス工房、手作り特産品の店など「安曇野の里」を中心にワサビ田や道祖神、開館したばかりの豊科近代美術館など見どころも多い。常念岳などアルプス連峰が絵になる。そして童心に還り、熟年には懐かしい童謡「メエメエ森の子ヤギ…」をハモってしまう。

清冽な湧き水がワサビ田にそそぐ

 「〈あずみの〉快い響きのことばだ。もう一度、舌の上に転がしてみる、〈安曇野〉。そうするだけで、光と影がまざった中世の野をほっつき歩いている気分に陥ってしまう」(劇作家、山崎 哲)確かにそうだ。田園風景が広がり、清冽な湧き水が流れてワサビ田にそそぐ。そこに豊科町開発公社が経営する「安曇野の里」がある。
 湧き水が落ちるところでは、みんなが柄杓に汲んで飲んでいる。そして「うまいなあ、感激的だよ」と天を仰いで言う。
 木造2階建てのドライブインは1階が手打ちそばなどのレストランや特産店、野菜の無人市もある「プラザ安曇野」だ。2階はガラス工房や工芸家の作品を売るコーナー、湧き水で入れたコーヒー(ワサビクッキー付き)、手作りソーセージが食べられるギャラリー・ティールームがある。

ガラス工芸を育てる

目玉は「あずみ野ガラス工房」だ。新しいガラス工芸を育てようと、東京・多摩美大クラフトデザイン研究室の協力で、卒業生が作品造りに取り組んでいる。見学ができるし、作品も売るので人気がある。町がヤング芸術家のために住居も世話しているが、第2工房を今年造ったほど。
 
著名人の肖像が並ぶ美術館

 そばに山岳写真家、故田淵行男記念館がある。アルプスの写真を中心に所持品だったカメラなどを展示している。外には小さいながらワサビ田があった。
 2`離れた近代美術館へ。文化エリアを中心に4月オープンしたばかり。中世ロマネスク様式による修道院をモデルにしたというだけに重厚でエキゾチックな建築。フランスでの活躍が長かった彫刻家、故高田博厚氏の作品を展示している。特にロマン・ロランやガンジー、日本の宮沢賢治、川端康成、志賀直哉、棟方志功ら著名人の肖像が多いのも特徴だ。

・童謡作詞家で金大教授の児山羊歌碑

 そばの松林に有名な童謡「森の児山羊」の歌碑があった。作詞者で元金沢大教授だった故藤森秀夫氏は、ここの出身。(右の写真) 藤森氏と笠原町長は親戚という。「ひょうひょうとして、童謡を作っただけに、やさしい、思いやりのある人でした」と町長。筆者も藤森教授に教養部でドイツ語を習ったので懐かしい。毎年、5月5日に童謡祭をし、「メエ、メエ、森の子ヤギ、森の子ヤギ、子ヤギ走れば、小石に当たる 当たりゃ あんよが ああ痛い…」と子供たちが合唱するそうだ。

窓を開ければ北アルプスが一幅の絵

 安曇野の里に戻り、山荘風の「ビレッジ安曇野」に泊まった。安いし、料理も山の幸を使い、なかなかいける。朝、野鳥の声で目を覚ました。窓を開ければ、アルプスが屏風のように立ちはだかっている。冷気も心地よく、命の洗濯をした感じがした。

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