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 関空10歳 悩みは深い


 朝日友の会で発行している「アサヒメイト第321号」平成16年12月1日号(発行所/朝日友の会事務局)から転載。

★本命は神戸沖だった

 この9月4日、関西国際空港は開港し10歳になった。経営は上向きというが、まだ赤字で、予想に遠く苦しい経営だ。「何で辺ぴなところに空港を造ったんや。空港関係の料金は高いし、時間も市内周辺から1時間半はかかる」と大阪市などの住民から評判が悪い。この声を聞くと内心複雑になるのが筆者だ。
 実は33年前の昭和46年(1971)1月22日の朝日新聞朝刊に、「関西空港は神戸ポートアイランド沖が最適」との報告書を、筆者がスクープ、1面トップで報じた。運輸省が調査を依頼していた都市工学研究所と日本建設機械化協会がまとめた報告書で、反響は大きく、連日反対陳情団が神戸市を訪れた。革新系の支持で市長になった宮崎市長も反対を表明。結果的に3年後、航空審議会が、現在の泉州沖に決めた。

★土砂跡地の利用で苦戦

 その報告書は神戸沖最適の理由に@地盤が他の候補地と比べ一番硬く、騒音の影響も海上だけA完成20年間の沈下量は神戸沖3・5b、泉南沖は5・1b(注・現実はすでに約12・2b沈下)B工費は7770億円(注・実際は2倍の1兆5000億円で神戸空港が5つ出来る)。
 かくて関空建設はイバラの道を歩むことになった。埋め立て土砂を兵庫、和歌山などの山を削り、跡地にニュータウン構想などを描いたが、バブルが弾けてだめ。淡路島の土砂採取跡は「花博」を開催したり、公園化亜などと苦心。対岸の泉佐野市は府との3セクで団地など計画したが破綻、同市の03年度の赤字も大阪府下最大の30億円と火の車。3市2町の合併話は「泉佐野市の救済合併ではないか」で、立ち消えに。
 国は廃止が条件だった伊丹空港を国内線専用で存続させたため、関空の悩みが深まる。関空の国内線は開港時67便だったが、不便なため現在は43便に激減。国際線との乗り継ぎは不便になるばかり。

★既に5階建てビル相当が沈下

 やっかいだったのは沖合5`の水深18b、粘土のような軟弱地の埋め立て。建設時からの沈下は既に12・24b。約5階建てビルが沈んだ計算。いまも毎年10数a沈下が続き、沈下防止に56億円、「止水壁」に、この4年間で30億円注ぎ込んだ。1兆2500億円の有利子負債を抱え、年間300億円の利子払いが重荷。それでも2番目の滑走路に1億円かけて建設しようとの“ノー天気”ぶり。

★建設費は中部空港の2倍以上

 分からないのがべらぼうな建設費。来年2月開港の名古屋・中部国際空港も海上埋め立てだが建設費は当初より1200億円以上節約し約6400億円と関空の半分以下、さすが社長がトヨタ副社長出身だ。関空も民間経営だが、初代社長は運輸省の天下りで、7年前に東京地検に収賄容疑で逮捕された。大盤振る舞いで利権も絡んでいたのか?。高い建設費が尾を引いてジャンボ1機の着陸料も関空が約83万円に対し中部は13万円も安く対抗出来そうもない。

★関西3空港で空中戦か?

 やっかいなのは幻だった神戸空港が浮上し、18年3月に開港する。「なぜ関空の神戸沖建設に反対したのか」とグチも聞こえる。「神戸港沖案に反対したのは一世一代の不覚」と宮崎市長が退任で語ったのが印象に残る。
 神戸空港の前途は霧の中、航空会社などの反応も鈍い。“ばらばらの関西3空港は乱気流の中での空中戦”で中部空港にもやられる、との皮肉も。関空は遅ればせながら昨年、元松下電器副社長を社長に登用、合理化に懸命だが、“革命的”経費削減、着陸料などを含め中部空港に対抗出来るサービス向上を目指す努力が必要だ。
 (元朝日新聞編集委員 吉原 暢彦)


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