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 義経が武術を磨いた鞍馬山


 朝日友の会で発行している「アサヒメイト第329号」平成17年08月1日号(発行所/朝日友の会事務局)から転載。

★巨大な赤天狗がお出迎え

 鞍馬駅を降りたら左側に長さ2・5b、鼻も1・5b突き出た赤天狗の顔が立ち「天 狗の山 鞍馬へようこそ」。天狗がこの山で牛若丸に兵法を教えた伝説から“義経 ブーム”にあやかって昨年、置いたという。

★全山に宇宙エネルギー溢れる

 階段を上がると仁王門。「鞍馬山は全体が信仰の道場。浄域を守るためにご協力を」 (パンフレット)とあり“愛山料”200円払う。この門が俗界と浄域の結界とも。 パンフには、本尊の尊天は宇宙の大霊であり、大活動体。万物を生かす宇宙エネル ギーで、その働きは愛と光と力になって現れる、と解説。今風に言えば“宇宙力”が この山に満ちているわけだ。

ケーブルに乗るコースと、下から九十九(つづら)折り道を登るコースがある。枕草 子に「近うて遠きもの」の例として出てくる「鞍馬のつづらをりという道」。取材の ため、この道にある由岐神社へ行く。タイマツを燃やす勇壮な秋の「鞍馬の火祭」で 有名。九十九(つづら)折り坂を上がると独特の割拝殿(重文)の由岐神社に。抜け ると義経が7歳から10年間住んだ東光坊跡に建つ源義経公供養塔に。平治物語には 「牛若は(父、源義朝の縁で)鞍馬寺の東光坊阿 梨蓮忍(に預けられ)禅林坊阿  梨覚日の弟子になって遮那王といった(略)昼は終日、(ここで)学問を励み、夜は 終夜、武芸を稽古した」(井伏鱒二訳)。

★今も湧く「息継ぎの水」

 戻って普明殿ケーブルを体験。100円払い、山門駅から急坂を2分で多宝塔駅。 登って行くと鞍馬弘教総本山の本殿金堂に。狛犬ならぬ“狛虎”が守っている。標高 410bの境内からは弁慶が修行した比叡山が目の前だ。 うっそうとし地上より4、5度は低いので風も心地よい。行き交うハイキング仲間 が多い。この辺から牛若丸伝説が増える。東光坊から奥の院へ剣道修行途中に、ノド を潤した「息つぎの水」は今もしたたり落ちていた。奥の院参道の頂上付近に高さ1 ・2bの「背比べ石」。義経16歳の時の背と同じという。奥州へ下る牛若丸が名残を 惜しんで背比べをしたとか。

★奇襲戦法をこの山で鍛えた

 根が隆起した“木の根道”が続く。固い地質で根が下へ伸びられず、地表を這う。こ の辺から僧正ガ谷不動堂にかけて牛若丸が天狗を相手に兵法の稽古をしたとされる。 村上元三著「源義経」には、義経が「ひらりひらりと飛んでいるように見えた(略) 木から木へ飛ぶムササビを鮮やかに打って落とすということは尋常の腕ではない」。 壇ノ浦の「八艘跳び」、神戸・一の谷合戦「鵯越え逆落とし」の奇襲戦法も、ここで 生まれたのだろう。

一気に降って西門に。約2`2時間。貴船神社が近い。貴船には料理旅館が多く、夏 の貴船川の川床料理が有名。

叡山電車・鞍馬下車。帰りは貴船からバスで同電車・貴船口へ。 (元朝日新聞編集委員 吉原 暢彦)


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