ウイスキー街道を行く 酔眼でネッシー探し
「スコッチ」は「スコットランドの」の意味だが、 スコッチウイスキーのことも指す。ロンドンから二時間北上すると、あの怪物ネッシーのいるスコットランドだ。インバネス空港から、羊の群れが遊ぶ平原をかなり走るとスペイ川サイドになる。ここから川沿いに南、グラスゴーへかけて百以上のモルトウイスキーの蒸留工場があり"ウイスキー街道"として知られる。スペイ川にはサケも、そ上してくるというから、サケを肴にウイスキーはたまらないだろう。
昨年の暮れ、ロンドンで乗り継いでスコットと一飛び、街道を走った。とにかく日本出発時から"酔いどれ"、いや"酔いトラ"の旅だった。乗ったヴァージン航空が日本〜ロンドン直行のヴァージン飛行を始めたばかりで、バーラウンジまである。スチュワーデスが一晩中、水割りやカクテルをサービスしてくれ、それをソファーにふんぞり返って飲めるからたまらない。
酔眼で「なぜ酒飲みを"左きき"というのか」なんて、くだらぬことを考えた。「酒杯は左手に持つから、鉱山では左を鑿(のみ=飲む)手、右を槌(つち)てというからとも」と辞典にある。なるほど。
スペイ川沿いの蒸留所では試飲させてくれたし、いろいろな道具も見せてくれた。昼には魚のサケが出てウイスキーの味を一段と引き立ててくれた。現地で飲むシングルモルト・ウイスキーはさずがにうまい。そして飲み過ぎは"いかんぞー(胃肝臓)、休肝せよ"と思いながら、こううまいウイスキーが次々と出て来ると強い意志も"カンパイ"(完敗)だ。しかし、蒸留所の説明では一般ウイスキーはシングルモルトを多品種混ぜる。八年貯蔵ものと十二年貯蔵ものをブレンドしても『八年』もの、としか表示できないなど、厳しい決まりがある、ことを知ったのは収穫だった。
さてネス湖。ネッシーも最近は見た人がいない。我輩も目を皿のようにして探したがだめ。そういえば空港の日本語パンフレット(こんなところまで日本人がよく来るのだろう)には卵から孵化したばかりのかわいらしいネッシーの顔があって「ネッシーはシャイで、なかなか顔を見せてくれません」とあった。が、酔いどれ男どもを相手にしてくれるはずがあるまい。「見たという人酔眼による幻覚症状では?」と、ついスネて"ヘンネッシー"を起こしたくなった。
(九十年八月号)