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 高級美酒競争 「かむたち」1升10万円

 俗に「口が肥える」という。最近の酒造界は、あくなき美酒の"飲み肥(こ)たえ追究"に酔心しているよう。酒屋をのぞいたら秋田の「朱金泥能代(かむたち)」という舌をカムタチそうな一・八リットル一〇〇,〇〇〇円の酒が。ゼロが一つ多いんじゃないか、と"酔涎"の"ナマコ?"に唾つけて見たが確かに十万円だ。「な、なぬ!」一合一万円計算だぞ。
 「山田錦四〇%精白 低温三年貯蔵 大吟醸」で限定三本。十月発売したが、その店ではすぐ売れ、来年の予約も締め切りというからオドロキ、モモノキ(生)酒。われら貧乏人は"サケ"て通るしかあるまい。"な酒"ある酒神バッカスが恵んでくれても"酒欣泥酔"に陥るバッカスで、ウワバミ言(ごと)を発し、舌を"噛む断ち"間違いなし。
 いやあ、まだあった。埼玉県熊谷市の秘蔵二十四年古酒「直実」(武将、熊谷直実の出身地にあやかった)、石川県の「天狗舞 吟こうぶり」は、いずれも七〇〇ミリリットル一万円。熊本県の「極至中汲み」、倉敷市の「歓之泉」は一・八リットルで一万円。その粋な名にも酔いそう。
 こんな横綱でなく大関級の庶民的"高究酒感(澗)"のする現実酒が、大関酒造の「純米大吟醸十段仕込」か。山田錦三五%精白、宮水を使い、仕込んだ杜氏名を記すなど凝っている。格段に醸(かも)し仕込んだ酒感がする。七〇〇ミリリットル四千八百円だから、大衆でも手が届く。早速、かって冷やして飲んだ。ヒヤー!手が"フルエティー"なほど、まったり、とろーりと格段、いや十段の味と酔い。贈った先輩からもすぐ電話。「女房も望外な味と喜び、二人で空けたよ」ごちそうさま。美酒を喜び合う。これ以上の望外な酒歓はなし。
        (九十一年二月号)

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