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 滝が酒になった伝説は今

 一献傾けながら「神よ,仏よ、我にナ酒(サケ)を与え賜え!」と祈ると、汲めども尽きぬ酒が出るといいなあ、と誰しも思う。もっともバーのホステスはウーロン茶に氷を入れ「ティーロック」と称し、酔っているふりしてるけどね。
 水が酒になった話は「孝子物語」だ。美濃の樵(きこり)で孝行者、源丞内がある日、山奥へ入り過ぎ、老父の晩酌用酒を買う時間がなくなった。「この滝が酒ならなあ」と思った瞬間、"ようろう"として気を失い、気付いたら岩の間から酒が涌いていたという"酒升(しゅしょう)"な話。腰のヒョウタンに汲んで帰ると老父は喜び、みるみる白髪が黒く、皺も消え若返ったという。
 伝え聞いた元正天皇は「孝行が神に通じ、老を養う若返り水になった」と年号を「養老」にした、という一千二百年前の話で「古今著聞集」に出てくる"な酒"ある話。あやかって、現在、安く飲ませる「養老之滝」チェーンが全国展開している。
 その養老の滝は岐阜県養老町・養老川上流にある。滝に向かって息をはずませ"ようろう"と坂道を上がる。ずらり土産物店が並び、ヒョウタン、養老の酒などを売っている。近くの養老神社に、こんこんと涌く清水が。これぞ酒になった水で、掬って飲む。もちろん酒の味がするはずはないが、髪が黒くなるかは後のお楽しみ。神頼みしよう。
 滝はさらに奥にあった。三十二メートルの高さから、とうとうと落ちていた。そばのベンチに座り、買った酒「養老の滝」を飲む。酔うほどに「瓢箪ブギ」が口をついて出た。「♪飲めや唄えや 世の中は 酒だ酒だよ瓢箪ブギ(略)養老の滝を飲みたいよ 腹一杯 滝がお酒になったとさ(略) そんないいこと もうないか ブラブラ」。ありっこないさ。"瓢箪からコマ"ならぬ滝が酒になったら酒造メーカーが潰れ、取り立て厳しい"酷税庁"が困るがな、ブラブラ。
       (九十一年六月号)

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