缶ビールが1万ドン
ベトナムを南のホーチミン市(旧サイゴン)から北のハノイ市まで一七〇〇キロ旅して地酒などを味わった。ビールの値段は普通缶で輸入ものハイネケン、サンミゲル、タイガーが一万三千ドン〜一万一千ドン。地ビールはサイゴン、ダナンが四千ドン〜八千ドンと聞くと、知らない人は胸にドンときて「ヒャーなんとハイ(高い)なのだ」とビックリ、コックリ。
あわてなさんな。目下、ドイモイ(改革)中。インフレがひどく、ただいま一ドルが一万七百ドン、一円が八十二ドンの計算、なんのことはない。ハイネケンで一・二ドル、百五十八円。サイゴンなら四十円〜七十円と安い。「そうか、それならドンといこう」とハイネケンを六本注文してまいった。七万八千ドンなり。主力は紙幣の二千ドンで三十九枚、ヨレヨレの紙幣を数えるのに"シヘイ"し、心理的には"ハイ値ケン"。
店でジョニ赤の値段二十四万五千ドンを見た時、はじめドイモイし、次に「なんだ二十三ドルか、買おう」と注文。やがて二千ドン紙幣を百二十二枚も積み上げてから「しまった!」三十ドルしかドンに換えていなかったから、手持ちドンは、これでサイゴンとなった。実際、楽しいトラベルをしていると百六十枚(三十ドル)のドン札を持つのが限界だ。目立ってスリや、かっぱらいにやられるドンな"トラブル"が起こる可能性がある。
ハノイから北へ車で二時間、山岳地区ホアビンで高床式の家に住む少数民族のムオン族を訪れたら自家醸造酒で歓待してくれた。原料は米というが四十度はあろうか。焼酎に似た感じの透明酒で、最初においがムオンときたが、やがてドンドンと酔う美酒に。
その帰り、赤米酒「レオカン」を買った。七五〇ミリリットル八百ドン。たったの十円。三十五度で飴色、やや甘く、まったり味。これでサイゴンにしたが、日本のビールと酒がやっぱり一番うまかドン。
(九十二年三月号)