賑わう英国のパブは社交場
パブとかパブレストランというネーミングの店が日本にも増えてきた。手軽に安く飲める店という意味だが、平成どん底不況時代だけにパブは"プア(貧しい)"に聞こえる。が、パブといえば、やはりイギリスで生まれたもので「パブリック・ハウス(公共の家)」の略。
小林章夫著「パブ・大英帝国の社交場」によると、イギリス人の生活にとって、パブは切っても切れない大事な場所で五千店もあるという。しかも、フランスのカフェと比べると、暗くて、汚い。百年も掃除をしていないのを誇りにしているような店もあるとか。
そういえば、スコットランドを旅したとき、小さな田舎のパブへ寄ったが、大英帝国を今も"ホコリ?"にしているのか、と思うくらい汚なかった。そんな所で昼間から飲んだくれた老人がたくさんいて「オー・ジャパニーズ」と握手を求めてきた。だいたい、イギリスでは、こんなパブで昼からサンドイッチなどを食べ、ビールを飲むのがジョウシキ。これじゃ、晩秋の息絶え絶えのイギリス、いやキリギリス同然、大帝国も地に落ちるはずだと思った。
でも、パブは社交場も兼ねている。スコットランドのグラスゴーで夜、同僚らと行った「ザ・ポットスチル」という蒸留釜そのものの名のパブにはたまげた。広い立ち飲みバーで、シングルモルトやビールで乾杯と"グラスでゴー?"している人がいっぱいなのだ。
日本でウイスキーといえば、いろいろなシングルモルトをブレンドしたものがほとんどだが、さすが本場だ。個性のあるシングルモルトがずらりと並んでいる。その数、百種類以上で注文に迷う。グリーンボトルの「ミルトンダフ」をみつけて注文した。ショットグラスと引き換えに料金を払う仕組みだ。"いない、いないバー"の無銭飲食ができないところがミソ。そういえば、ベルギーのあるパブで、クワックという地ビールを注文すると高価なジョッキにいれてくれる代わりに片方の靴を預かる徹底ぶりを、近藤愛紀・関西外大助教授が学内通信に書いている。
ミルトンダフは、さずがにフルーティーな深い味わいだった。 (九十二年五月号)