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旅新発見「信州でソバ打ちに挑戦」


サンケイスポーツ1991年10月17日


 秋はやっぱり信州がいい。空気もうまいし、もぎたて汁のしたたるリンゴがかじれる。澄んだ月がまたきれいだ。その月をめでながら、自分で打ったソバで一献傾ける。こんな贅沢があるかな。一茶の句をもじれば「信濃では月とリンゴとおらが手打ち」。手打ちソバ体験民宿道場で、ソバ打ちに挑戦、温泉につかり、リフレッシュした。命が延びたかな。

リンゴ畑を電車が行く

 長野市から長野電鉄に乗ると信濃路へ来たという実感が湧く。途中まで単線だし、特急でものんびり走る感じだ。それも赤いリンゴがたわわに実った畑というより、リンゴ林をすり抜けるようにして走る。手を出したらリンゴに届きそう。さしずめ“リンゴ電車”だ。

ソバロード

 信州中野駅からタクシーに乗る。「北志賀のソバ民宿はいいですよ。昔からの常連がよく来ます」と運転手。竜王入り口から道路片側に「ソバの里」をPRしようと、町の呼びかけで始めた“ソバロード”に。白い花がずらりと続き「おらがソバの里」に来た実感がしてきた。そういえば、最近、国内でソバの花をあまり見なくなった。そば粉は8割まで輸入になっているのだ。国内産そば粉は貴重になったと聞いた。

冷や汗かいてソバ打ち

 まずはソバ打ち民宿の「永井山荘」へ。他の民宿の主人も待っていてくれて、ソバ打ちを始める。「蔵出しソバ粉」(蔵で保存したソバの実を必要なだけ自家製粉したもの)1`c(5−6人前)を、山ゴボウの葉を煮て、手もみして作った、つなぎとしてなじませる。清水を少し入れて、丸くこね上げる。
 この辺で早くも汗が出る。みんなに見られているので冷や汗か。こね棒で延ばす。平均に延ばすのが難しい。力もいる。「もっとまんべんなく薄く」「穴があいたぞ」と外野席がうるさい。穴があったら入りたい心境。助けを借りて、とにかく仕上げた。今度は、これをたたんで細かく切る。これも大変だった。
 湯がいて、冷たい清水で洗う。この清水が味を良くし、ソバに“腰”をつけるのだ。付け汁にネギと本わさびを入れて食べる。野性的で深みがある味だった。自分で打った感激もあるからうまい。自家製の漬け物と堅豆腐、煮物などがソバの味を引き立ててくれる。太いのが入っているのも手打ちの証明だ。

ルーツは学生村の民宿

 ここの民宿は昭和30年代初めからで、民宿のシニセだ。夏休みに、涼しい「学生村」として都会の学生を泊めて勉強させた。まだエアコンが普及していないころ、都会の学生に人気だったそうだ。「皆さん、弁護士や会社の幹部になられていますよ。時々懐かしいと家族で来られます」。今頃の学生はやれ個室、水洗トイレだ、と要求するので民宿は敬遠されがち、という。

人気のモンキー入浴ショー

 「温泉に入る猿」として有名になった地獄谷野猿公苑をのぞく。長電の終点・湯田中駅からタクシーで15分ほど。そこから少し山の中へ歩く。  川の一角で10bも吹き上げる噴泉が、湯量の豊富さを示している。川の中に岩で囲った野猿専用の露天風呂。沢山の猿が気持ちよさそうに温泉に浸かっていた。カメラを向けると一斉に「いやだ」とばかりに潜水し、あちこちで顔を上げて「どうだ。うまく写せないだろう。チップを出せば、ポースを考えてもいいよ」といわんばかりのワンパク猿。ただ今“湯浴みモンキー”300匹、うち赤ちゃん猿47匹。入苑料は360円。
 この“モンキー入浴ショー”で年間20万人も観光客を集めるというから立派な「モンキースター」。まったく敵も“サル”もの。今風に言えば“猿でもわかる”温泉の効能というところか。こっちも湯田中温泉で1泊して命の洗濯をした。

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