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お節考「豊富な故郷の味に感激」


加能人 2004年3月号掲載


★ルーツは中国・五節供(ごせっく)
昨年に続き今年の新年も能登和倉温泉・加賀屋のお節料理セット(三重)で迎えた。 日本大百科全書によると、中国の年中行事の五節供(ごせっく)のうち、代表的な正 月の節供料理から由来しているという。昭和の初めまでは家庭で自慢の味を来客に供 するのを誇りにし、故郷を持つ人は特産を取り寄せたとも。今春は金沢の料亭のセッ ト(二重で3万5000円)も食する機会に恵まれた。
★カブラ寿司・ゴリ・能登アワビ・コノワタ…郷土の味豊富な加賀屋セット
結論から言えば、加賀屋のセットが最高だった。重箱のふたに干支の猿が黄金の宝物 袋を捧げた絵漆塗り。カズノコ、黒豆、栗きんとん、田作りなどは定番だが、加賀屋 セットにはゴリの甘露煮、合鴨薫製、竹筒入りのコノワタ、それにカブラ寿司、能登 アワビの酒蒸し、加賀手鞠麩、くるみかつお、など加賀特産の海・川・山の幸がが絶 妙な深い味わいで入っていた。これに郷里、根上町の兄弟から届いた好物の美川産 「フグとニシンの糠漬け」を肴に酒の味も最高だった。
 故郷を離れて40年にもなると、こうした、ふる里の特産がなによりだ。金沢には 昔から「ごり屋」があってフルコースを食べたのも思い出。あれは浅野川?で獲れる と聞いたが。それを賞味出来るなんて幸せだ。
カブラ寿司にも感心した。和紙に包んで専門の金沢「丸西製」と明記、食べ頃の深い 味わい。これは食べ頃が難しい。早いとカブラ臭いし、過ぎると酸っぱくなる。
★3万円セット200組、すぐ完売に
   加賀屋は、この「お節」を日本交通公社(JTB)とタイアップして200組(1 セット3万円)の注文を取ったら、あっという間に締め切りになる人気だったと聞い た。石川出身の人たちも多く注文したのだろう。むべなるかなと思う。なんでも金沢 で100万円のお節セットを売り出した料亭もあったそうで3セット売れたとか。料 理の100万円は考えられないが、輪島塗などの容器が高級だったのだろう。
★お節はこれでいいか? 洋風混在望む声
ところで、今回は一般的「お節」について同僚などに色々聞いてみた。結論的には、 「日本の伝統である、お節は食べたい。が、孫は元日から肉など洋食を欲しがるので 困る。お節セットに洋食を増やして欲しい」ということだった。大阪のデパートなど で聞くと、少子化と共に、2−3万円の洋食も入れた、お節セットの注文が増えてい るという。が、今の若い世代が、今後、昔風のお節にどれだけ興味を持つかが問題。
そこで提案は、自然放牧でミネラルを含んだ清水を飲んで育った石川産の牛や豚肉を 使用した無添加のハムやベーコンを主にした加工品が出来ないか、ということだ。ス ペインなどでは、豚のモモ肉を塩漬けにして数ヶ月、それを吊したまま好きなだけ 切ってくれる「ハモンセラーノ」の味が忘れられない。最近はデパートでも、本場欧 州の生ハムなどが売り出されているが。
信州・木島平にある「「リンゴを食べて育った牛のステーキ」を看板にした宿泊出来 るレストラン「オーベルジュ・グルービー」に人気がある。目の前の鉄板で炎を上げ て焼く。なるほど柔らかく甘みも絶妙で美味だった。はじめに出てくるのがイワナの 卵の塩漬け、という珍味もにくい。
ついでながら、石川・美川だけが免許を持つというフグの卵巣の糠漬けも最高で、よ く取り寄せる。この手の糠漬けは匂いを封じるのが難問だが、こうした珍味が、お節 セットに登場する日が来ないかなあ、という“初夢”を見た。

元朝日新聞編集委員   吉原 暢彦

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